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「待って…」
思わず彼のジャケットの袖を掴んでいた
どうしてそんな行動に出たのか、自分でも良く分からない
ただ、もう少し話をしたい
そんな気持ちが自然と私を動かした
「どうしたの?」
頭上から声が降ってくる
急に捕まえたのに、優しい声色で
「お、御礼がしたくて…」
「え、でも…」
袖を掴む手が震える
周りからはどよめきと、期待の声
視線が痛くて、身体中の熱が急上昇する
彼は一度周囲を見渡して、困ったように微笑んだ
「じゃあ、君の時間をくれないかな」
「時間?」
「うん、デートして欲しい」
綺麗な笑顔に思わず頷くと、車へと誘導される
普通ならこんなの決してついていかないだろうに、どうかしている
でも、不思議と悪い人だとは思えない
大丈夫、少しだけ…少しお話するだけ…
多分、そんな甘い考えだったとも思う
私は高鳴る鼓動に気付かぬふりをして、助手席に乗り込んだ
一つのドラマを見たかのようなそんな私達のやりとりに、周りの子達はまだどよめいている
「じゃあ、少し動かすね」
彼はそう言ってアクセルを踏んだ
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