朝永

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きっと毎日が楽しくて、その相手がこの人ならば、どんなに幸せだろうか そう思わずにはいられない これが恋だと言うものなのだろうか? 日向さんには感じない、何だか温かい感情が、私の胸中を支配している… 「すみません、結局ご馳走になってしまって」 「良いよ良いよ、俺が誘ったんだから それに、女の子にお金出させるような酷いやつじゃないからさ」 そう言って樹さんは微笑む プレート一皿で3000円の世界を軽々と奢ってくれるような人も中々凄いとは思うが 「うーん…18時か… そろそろ帰らないとだね」 腕時計を見ながら樹さんが呟く 門限は22時だけれど、まだ高校生の身分の私を連れ回さないようにの配慮だろう その気持ちが嬉しくて、少し切なく感じた 「樹さん、あの…」 「あれ、沙夜さん?」 言葉が同時に被る 振り向いた先にはビジネススーツを見に纏った日向さんがいた 「あぁ、やっぱり沙夜さんだ …えーと、そちらは?」 「あ、この方は…」 樹さんを見上げると、ほんの一瞬その顔が強張ったように感じた が、それは気の所為だと言わんばかりに彼は笑顔を浮かべる 「朝永樹です 彼女の家庭教師をしています 今日は、彼女のテスト結果が良かったのでご褒美に ね、沙夜ちゃん?」 「あ、そうなんです…」 咄嗟の嘘に肯定を返すと、日向さんもそうでしたか、と笑顔を返す 「あ、私は日向伊織です」 「へぇ、あの日向カンパニーの」 名刺を受取りながら、樹さんは笑顔で返す 和かに会話をしてから日向さんは会社に戻る時間だと、踵を返す 「沙夜さん、また連絡します 次の食事の席で、良い返事を期待しますね」 なんて爆弾発言を残して…
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