第1章

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    そんなことを、わたしはもう六年続けている。大学を卒業し就職しても、クリスマスの繁忙期だけはお手伝いをさせてほしいと懇願し、なんとかそれを勝ち獲った。今年なんか有給使ってここにいる。 どうしてなのかは……よく、自分でもわかっていない。 ただ、 ただ、なんとなく嬉しくて。 師匠でもあるお父さんが現役を少し早く引退され、下の人達がそれを不安に思わないように変に固く構えてしまうところもあったりした当時の店長。元々寡黙だったけれど更に口数が減るときもあり、自分に厳しくしすぎてしまうこともあったように思う。従業員は店長に信頼を置いているし、店長もそれを感じてくれてはいるけれど、元来不器用な性格が、良い着地点にまだ落ち着けなかったのかもしれない。 ……なんて、わたしなんかに分析されたくはないだろうが。 ただ、わたしより歳上だけれど、まだまだ若い店長に刻まれた眉間の皺が、少しでもなくなる瞬間が嬉しかったのだ。あるよりないほうがいい。ほんの少しでも、そんなときがあっていてほしい人。 わたしがこんなことをして申し訳ないと感じるようなお相手は店長にはいないらしい。そんな存在が出来るまでは、店長が起きて気付かれるまではとずるずると、わたしがこんなことをしている理由も導き出せないまま六年、変なプレッシャーによる皺ではなかった眉間のそれは結局毎年刻まれていて――わたしはそれが一瞬でもなくなってほしくて、年に一度の秘密の時間を過ごしてきた。誰にも悟られず。気付かれず。 そうして、七年目が今始まる。
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