17歳、それぞれの世界で。

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 理央があげたおにぎりを食べながら、ナギは「でも」と小さくスタンプを押すようにつぶやく。 「謝れて、うまくいったらいいよね。エイジくん」  目を細めて笑うナギの口元には、米粒がくっついていた。毎度思うが、よくもまあ漫画のようにこんなところに米粒をくっつけて気づかないでいられるよな……と思う。理央は親指で、それをとってやる。  くすぐったそうに身をすくませるナギを見ていると、なぜか胸がズキッと痛む。ちょっといじわるしたくなる。 「なんでキスさせたんだよ。あいつに」  思いもよらぬ疑問が、無意識に口から飛びだす。自分が何を口走ったのか理解するのに、数秒かかった。 「だって、『させて』って、エイジくんが言ったから」 「じゃあおまえは、『キスさせてくれ』って言われたら誰にでもすんのかよ」 「う~ん、断る理由はないかなァ」 「嫌なやつに言われたら?」 「嫌なやつ……う~ん」 「オッサンとか」 「アジちゃん? アジちゃんはいい人だからするよ」  絵ヅラを想像してしまい、伯父を例に出したことを若干後悔する。 「っていうことは、おまえは誰とでもキスできるってことなのか」 「う~ん。たぶん……?」  考えながらうなずくナギを前にし、理央は盛大にため息をついた。なんてユルい貞操観念なんだろう。エイジが無理矢理相手を組みし抱くような人間じゃなくてよかった。相手が相手だったら、今ここで、ナギも自分も笑ってはいられなかったにちがいない。 「ダメだ」 「なにが?」 「誰とでもキスするのは禁止ってこと」 「滅多にしないよ?」 「その《滅多》もしちゃダメだっつってんだよ」 「なんで?」  純真無垢なナギの目が、理央を見上げる。
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