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「ナギちゃん、射精したことがないっていうか……そもそもチンコが勃ったことがないみたいなの」
「……インポってことですか」
「アタシは専門家じゃないからわからないわ。でも、セックスの経験なんてもちろん、夢精もしたことがないみたい。そういう欲望に駆り立てられたことがないらしいの」
「……」
幼稚な体つきのナギだが、さすがに男としての機能の成長さえも遅れているとは思ってもみなかった。たしかにその印象は、二年前から小学校高学年ぐらいのまま止まっている。
「そんなわけで、盛り上がってたのはコッチだけかと思ったら、アタシのムスコもすっかり元気なくしちゃったわ」
その言葉を聞いて、ようやく肩の力が抜けた。ナギの性に関するデリケートな話を聞いているはずなのに、理央はひどく安心してしまったのである。
「今ホッとしたでしょ」
「いや、べつに……」
ぶっきらぼうに答える。
「気づいたらすっぽんぽんの男二人、ベッドの上で性のお勉強よ。でも安心して。実践じゃなくて、あくまでも座学だから」
エイジは三本目の煙草に火をつけた。鯵坂よりも早いペースの喫煙者を、理央は生まれてはじめて目の当たりにした。
「でもホント……不思議なコね。ナギちゃんって」
「それは……ちょっとわかる気がします。アホだけど」
「フフッ。仲がいいのね。そんなこんなで、二人で性のお勉強してたのよ。でもね、いつの間にか今度はアタシの話になっちゃって」
エイジはガハハと笑った。見た目はまだ二十歳そこそこのゴツイ男だけれど、その仕草はずいぶんとおばさんくさかった。
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