17歳、それぞれの世界で。

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***  鯵坂には、直接二人でさらなみに帰ると伝えた。電話越しの鯵坂の声は、疲労と安堵の空気が含まれていて、聞いてるこちらがちょっと不憫に感じるものだった。もしかしたら、まだ本業のトラブルは解決できていないのかもしれない。  エイジと別れたあと、理央とナギはさらなみに向かって足を進めていた。時刻は夜の十一時をまわっている。ナギを迎えに行ってから食べればいいやと考えていたので、夕食はまだだった。  だが、こんな時間である。さらなみに帰ったところで、おそらく食事は出てこない。  今宵の夕食をあきらめていた頃である。ナギが突然、「お腹すいた」と言ってコンビニの前で立ち止まった。 「シールージュで食ったんじゃないの」 「ううん。飲み物は飲んだけど、食べ物はおいしくなかったから食べなかった」  ナギは胃のあたりに手を置きながら、理央の了承も得ず、夜にはまぶしすぎるコンビニの店内へと入って行った。  もちろん置いていけるはずもなく、理央もあとに続く。  店内でナギは、総菜コーナーでイカ焼きを手にすると、他の商品には目もくれず、レジへと並んだ。 「それだけかよ? せめて飲み物とか買わねえの?」 「僕、食べてるときに飲み物飲まないよ。もし喉が乾いたら本山くんにもらおうと思って」 「いや、オレが断ったらどうするんだよ」 「え~、そっか~。そしたらどうしよう」  本気で考えているうちにレジはナギの順番になる。結局イカ焼きだけを手に、ナギは会計を済ませることとなった。一方で理央はペットボトルのお茶と、おにぎりを三つ買った。
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