17歳、それぞれの世界で。

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 理央は歩きながら器用に封を開けると、豪快におにぎりを頬張った。海苔のカスがいくらか風に舞っても気にしない。  うしろではイカ焼きをくちゃくちゃと噛みながら、ナギが歩いていた。相変わらず、音が不快である。  エイジと別れてからの道中、理央とナギは、先程の出来事について、ほとんど言葉を交わしていなかった。あたりさわりのないことはちょっと話したけれど、エイジのことを言葉で共有するのは、難しいと思ったからである。  二個目のおにぎりを半分食べ終わったところで、突如二人の真上を、一羽の大きな鳥が羽ばたいた。持ち前の反射神経で身を屈めると、鳥は理央の後方を狙って一気に下降した。 「うわッ!」  うしろを振り返ると、目を丸くしたナギがポツンと立ちすくんでいた。何が起きたかわからない、といったさまである。しかし、つい先ほどまで手にあったイカ焼きが、神隠しにあったみたいに、その手から無くなっていた。 「なに、もう食い終わったのか?」 「ち、ちがうよ! いま、すっごく大きな鳥がきて、僕のイカをパクッて食べちゃったんだ!」 「ああ、トンビか」  見上げると、影になったトンビが、バサバサと翼をはためかせ、夜空を旋回していた。昔遊んだ飛行機のおもちゃを思いだす。 「ま、イカ焼きはまずいだろうな。食べ歩くのに」 「ひどいよ! 先に言ってくれればよかったのにっ」 「知るかよ」  口ではそんなことを言いながらも、理央はちゃんと残りのおにぎりをナギに(封を開けて)あげたのだった。
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