17歳、それぞれの世界で。

29/32
299人が本棚に入れています
本棚に追加
/542ページ
 そう言うと、理央はナギの頭を両手でつかみ、無理やり顔を上げさせた。不安に怯えた目が、理央をとらえる。  泣きそうだった。でも、ナギは泣かない。何度その目に、騙されてきたことだろう。  最低だ。  頭の中で、もう一人の自分が言う。  誰に?  決まっている。  《オマエ》だよ。  理央はナギの唇に、乱暴に自分の唇を押しあてた。 「……っ!」  薄い唇を、無理矢理奪う。  昨年の夏とは異なり、ナギは頭を振って理央のキスに抵抗した。いったん唇が離れる。その隙を狙って、ナギが逃げようとする。  理央は相手のシャツや手足を乱暴な気持ちで引っ張り、時には押さえつけ、その唇を何度も何度も奪った。 「ふ……っ。う、ああ……っ!」  もがき続けるナギの顎をつかんで固定し、強引に空を見上げるようにさせる。だが、空なんかよりも《自分を見ろ》というように、理央はナギの視界をキスの嵐で覆った。  唇と唇のあいだに舌をいれると、よりいっそう抵抗が激しくなった。 「や、ら……っ! い、やあら、あ……っ!」  舌で舌を犯している最中、ナギは「嫌だ」と言い続けた。あまりにも嫌だ嫌だ言うので、理央は冷静に、やっぱり嫌なやつとのキスは嫌なんじゃん、と思う。  だが、さすがにそれは口にできなかった。口にしてしまったら、本当に終わると思ったからだ。  ――モウオワッテルヨ。  もう一人の自分が、耳元で囁く。  理央はハッとして、唇を離した。ゆっくりと自分の下で砂まみれになっている男に目を落とす。
/542ページ

最初のコメントを投稿しよう!