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「……っ」
ナギの目尻に光るものを、理央はこのとき、ハッキリと目にしたのである。
――――涙。
ナギは、静かに涙を流していた。暗闇の中で集めた光みたいな涙だった。それは徐々に体積を大きくなると、流れ星のようにナギのこめかみに落ちた。
「ナ、ナギ……」
頭が真っ白になって、理央はナギの上からどいた。自分は何も変わっていなかった。だが、ナギはどうだろう。
理央はおそるおそる、ナギのすべてを見た。砂浜に仰向けになったナギは、全身砂まみれになって、はらはらと静かに涙を流していた。砂漠で干からび死んでしまった人のようだった。だが、ナギは生きている。涙がそれを証明していた。
理央はその場にガクッと両膝をついた。目の前の現実は、あまりにも残酷だった。だが、その残酷さをつくったのはこの場において、間違いなく自分しかいないのだ。
「オ、オレ……っ。オレ……っ」
理央は自分の頭を抱え、砂浜に額をつけた。海風に舞った砂が目に入って痛い。涙が出てくる。声を出さずにはいられなかった。
「ああああああっ!」
なんてことをしてしまったんだろう。この無邪気で何も知らない男に。自分のことを友達だと言ったこの男に。
自分への悔しさと怒りで、涙が止まらなかった。身勝手だとわかっていながらも、理央はその言葉を言わずにはいられなかった。
「ごめん……っ! ほんとにごめん……っ! オレ、なんてことを……っ」
謝り続ける理央の声に、ナギのそれが重なる。
「もとやまくん」
「な、なんだ」
「……起こして」
ナギは空に向かって手を広げた。まるで世界を抱きしめるかのように。
理央はかっこ悪くナギへと近づくと、その腕をとった。相手の体をいたわりながら、ゆっくりと上体を起こして支える。
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