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「ナギ。オレを殴ってくれ」
理央はナギと同じ目線になって、そう言った。殴ってもらって罪が消えることはないけれど、今ここで、ナギを傷つけた者としての責任が、自分にはあると思ったからだ。
ナギは目尻の涙を親指で拭うと、「へへ」と、弱々しく笑った。
「友達で……特別に好き? 僕のこと」
「……?」
「だからキスしたんじゃないの?」
「オレが嫌になったんじゃないのか」
「嫌だなんて言ってないよ」
「で、でも……今」
「息ができないのは嫌だった」
「……」
ナギのその態度は、正しいとはいえなかった。ちゃんと責めて、糾弾しなければ、人はまた同じ過ちを繰り返す。
「殴れよっ! オレのことを、殴ってくれよっ!」
ナギは首を横に振る。
「な、なんでだよ……っ!」
「エイジくんが言ってたんだ。僕たちの年代の男の子は、性的なことに興味津々になるものなんだって。だから、その衝動を押さえつけようとすることは、僕らには酷なことなんだって」
「違う! オレがおまえにしたことは、犯罪なんだよっ! おまえはオレに傷つけられたんだっ!」
「僕、いいよ。本山くんなら。男の僕でよかったら、キスもセックスも付き合う」
ナギの口から次々出てくる言葉に、理央は悲しい気持ちになった。
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