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その日一日、ナギの機嫌はすこぶるよかった。店に来た客全員に愛想を振りまき、女性客には可愛がられ、カップルで来た男性に嫌な顔をされていた。
だが、自分に向けられる悪意に疎いのか、はたまた気づいていても無視できるのか、ナギはずっとヘラヘラとたらし笑顔を浮かべていた。男性客のなかには、そんなナギの距離の近い笑顔に気おされて、何かに目覚めかけているような人も数人いた。
ナギを一瞬にして愛嬌のある接客上手にしてしまった葉書の送り主に、さすがの理央も気にならざるをえなかった。
だが、訊いたところで、ナギの回答は決まっている。英語ができない日本人よろしく単語を放つだけの、意味不明な説明が返ってくるだけである。
そういうわけで、理央は気になる気持ちを振り払って、ホールの仕事に集中しようとした。
この日、いつもなら絶対にしないようなオーダーのミスを三回もして、鯵坂に怒られた理央であった。
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