貴子《たかこ》と雄心《ゆうしん》(姉と弟)

2/3
前へ
/9ページ
次へ
 都内の大学を無事卒業して、地元で就職する事を決めた僕は、せめて両親を納得させるだけの職場をと思い、地元では有名な会社に無事就職することが出来た。  親元に居たい訳ではない。  両親を安心させるためでもない。  ただ、二つ上の姉の傍に居たいだけだった。  僕は、親からネグレストを受けていた。  でも、父も母も何故か姉の事だけは可愛がっていた。  ある程度大きくなって、姉もその事に気付いたのだろう。  姉が小学校高学年になった頃位からだと思う。  僕の欲しいものを、姉が両親にねだる様になったのは。  お菓子だったら、両親の目を盗んで半分こしてくれた。  ゲーム機だったら、親のいない間にこっそり貸してくれた。  でも、流石に服だけはどうする事も出来ず、姉は買い物に行った先々で「これ、雄心(ゆうしん)に似合いそう」なんて言いながら、半ば強引に両親を説得してくれていた。  
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加