林檎の欠片

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「おい!睦月にお菓子与えすぎんなっていつも言ってるだろ!」 「あ、保護者登場ー!!睦月、菓子隠せ!隠蔽しろ隠蔽!」 柊が声を掛けた途端、塩野が騒ぎ立てる。 慌てるくらいなら最初からあまり与えるなと毎回注意しているものの、それは無理だとはっきりと塩野に言われてしまった。 「お前なあ、あんま菓子与えすぎると、こいつが昼飯食わなくなるの分かってんだろ?」 「だってさー、千尋ちゃんがさ、おねだりしてくるんだもん。渡さないわけにはいかないでしょ!」 少し長めで癖のある髪を指でくるくると弄りながら、塩野は子供のように口を尖らせる。 「…睦月。」 じとっと睦月の方を見ながら名前を呼ぶ。 「…俺は知らない。」 「あ、ちょっと千尋ちゃん!?裏切りだからねそれ!」 睦月はわざとらしくそっぽを向き、またお菓子を食べ進めている。 そんなに食ってよく飽きないなあといつも思うが、こいつにとってお菓子とはご飯みたいなものらしい。何とも不健康である。 ポッキーを食べ終え、次のお菓子を食べようとしている睦月の手を掴み、素早くお菓子を没収する。 「あ、まってよ、柊。まだ食べ終わってないよ?」 「だめだっつってんだろ。お前、昼飯食えなくなるの自分でも分かるだろ。それとも何だ、俺の作った飯をまた残すつもりなのか?お前は。」 前に、いつも菓子ばかりであまりご飯を食べようとしない睦月に、不健康だから食えと自分の弁当を無理矢理分けてやったことがある。 最初は不服そうにしていた睦月だったが、一口食べた途端ばくばくと食べ進めはじめた。 それ以来、なにかと睦月が弁当のおかずをねだってくるので、柊は自分の弁当のついでに睦月の分も作ってやることにしたのだ。
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