林檎の欠片

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「俺、塩野弘樹って言うんだ~!よろしくね!」 入学式を終えてクラスへ移動しているとき、早速話しかけて来た奴がいた。 なんだか煩わしい奴ではあるが、入学早々一人で浮くよりはましだと考え、お互いに自己紹介を済ます。 そしてこいつから聞いて初めて、俺はあいつの存在を知ることとなる。 「てかさー、見た?めっっちゃくちゃ綺麗なやつがいんの。俺さ、びっくりしちゃった。あんな顔整ってるの初めてみたかも。」 「そんなに綺麗だったのか?」 「うん。そりゃもーほんとに。なんか人形みたいでさ。中性的?っていうか。」 「ほー。そんな奴もいるもんだな。」 人の顔面など特に気にしたことはないが、ここまで言われるくらいの奴だったら見てみたい気もしていた。 クラスに着くと何人かはもう席に座り始めている。 「あーあ。むさ苦しいったりゃありゃしないねえ。華がないよ!!華が!!」 「ま、そりゃ男子校だからな。」 「まーねえ。……あ、俺1番前の席なんだけど!!最悪。寝れないじゃん」 こいつは学校という存在の定義を一度考え直した方がいい気がする。 明らかに初っ端の授業から睡眠学習する気満々である。 「お前なあ……。あ、俺は1番後ろだ。」 「くっそお!!ずるいぞ!変われよ!」 「嫌だね。自分の運の無さを恨めよ。」 「うう……」 まだ会って少ししか経っていないが、何となく塩野のキャラクターが分かってきた気がする。 なかなか辛辣な対応ではあるが、こいつはこのくらいでいちいち凹んだりはしないだろう。 俺の席は1番後ろで、窓側から二列目だった。どうせなら一番端の窓際が良かったが、塩野の席に比べたら幾分ましだろう。 席に着くと、それからもぞろぞろとクラスの奴が揃って来て、もう殆どの席が埋まっていた。 唯一埋まっていないのは俺の隣の席だけだった。 隣の席、できればいいやつだったらいいんだが…そんなことを考えながら座っていると、後ろ側のドアがガラッと開く。 1番最後に来た。というのもあって、クラスのほとんどの奴が一斉に振り返ってドアの方を見る。
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