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が、ふと気付くと、音楽に紛れて聞こえる咀嚼音が、だんだん大きくなっている気がする…。
何か…近づいて来てないか?
ガリガリ
ポリポリ
クチャクチャ
ペチャペチャ
ペタペタ
誰かが…頭のおかしな奴が、何か得たいの知れないものを食べながら室内を歩き回っている?
気味が悪くなって、エンドロールの途中だったが、席を立とうとした。
その時
キキッ
何かが鳴いた。
動物の鳴き声のように聞こえた。
声の方、ゆっくりと足下に目をやると、前の座席の下に、無数の光る点。
目だ。
と、思った。
無数の小さな光る目が、こちらを見ていた。
体が凍りついたように動かない。
喉まで出かかった声を必死で飲み込む。
指一本動かしただけで、息ひとつ吐いただけで飛びかかってくるのではないか。
そう感じて、動けなくなった。
それはほんの一瞬だったような、数分だったような。
けれどその張りつめた均衡は、突然破られた。
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