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路地を抜け、人の行き交う表通りに出て、ようやく緊張が解けた。
電車に乗る頃には、自分の妄想がおかしくなった。
何を怖がっていたのか。
そんなことあるわけない。
それでも何となく、背筋に冷たいものが貼り付いたようなゾクゾクした感覚が残った。
翌日、会社の同僚に映画館のことを話したが、誰も知らなかった。
変な場所にあったから、そんなこともあるかもしれない…。
だがそれなら、そもそも何であんな目立たない場所に映画館なんか作ったのか。
(あれはただの妄想、忘れよう)と思う気持ちと
(気になる)という気持ちと。
迷った末、数日後、もう一度映画館に行ってみることにした。
昼間の明るい光の中で見れば、なんてことのないただの古い映画館だった、となることを期待して。
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