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「お毬、客も待ちわびてるんだもちっとだけ辛抱してくれ。
ささっと終わらせるから・・・」
源内は、じたばたと暴れるお毬と呼んだ娘の帯を掴み、優しい口調でなだめつつも強引に小屋の中へ引きずっていった。こうしてみると源内とお毬はまるで父と娘のように見えた。
肩越しに娘の様子を見ている左官職人の手を引きつつ、小屋番が東北訛りで話しかけてきた。
「兄さん、木戸銭はたったの八文。新しモン好きなら、まんず気に入るったよ!」
木戸銭八文は現代でいうと160円程度、超安酒一合(=180ml)くらいの値段で、十六文から三十二文(320~640円》という相場の他の見世物小屋の料金と比べたら、この料金は最低の部類だった。
* * *
舞台袖にある支度部屋にお毬を連れてきた源内は、座らせると背中に回り、乱れた襦袢の襟ぐりを掴んで躊躇なく一気に帯のあたりまで引き下ろした。
源内の目前に白い絹のようなすらりとした背中が現れた。
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