第一話 見世物小屋のマリア

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 お(まり)は、上半身が(あら)わになるもプクっとむくれているだけで、手は(ひざ)の上。  嫌がる様子も恥ずかしがる様子もなく、小さく膨らんだ前を隠そうともせずじっと座ったまま。  源内は、その背に急ぎ絵筆を走らせた。  「いいか、<マリア> お前はカラクリ人形なのにどう見ても人間にしか見えん だからこうやって()ぎ目を()いてやらねば見世物(みせもの)にならんのだ」  お(まり)と呼ばれたこの娘、カラクリ人形のマリア。  源内が長崎・出島(でじま)紅毛人(こうもうじん)から『ゑれきてる』とともに譲り受けたものだが、詳しい話はもう少し後で語ることになる。  絵筆は背から首筋、そして(わき)へさらさらと動いていった。  源内の筆が脇の下を通って二の腕へ移動すると、マリアは泣き笑いの表情。  「あ・・・あひゃひゃ!」などと変な声を発し、からだをくねくねとさせるので絵筆が描く()ぎ目の線がミミズが()ったようにヨレヨレになってしまった。  「マリア!」  「ひぃぃ~・・・だってだってだって、・・・く、くすぐったいんだもん」  「人形のくせに、くすぐったいとはな。     
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