7人が本棚に入れています
本棚に追加
お毬は、上半身が露わになるもプクっとむくれているだけで、手は膝の上。
嫌がる様子も恥ずかしがる様子もなく、小さく膨らんだ前を隠そうともせずじっと座ったまま。
源内は、その背に急ぎ絵筆を走らせた。
「いいか、<マリア>
お前はカラクリ人形なのにどう見ても人間にしか見えん
だからこうやって継ぎ目を描いてやらねば見世物にならんのだ」
お毬と呼ばれたこの娘、カラクリ人形のマリア。
源内が長崎・出島で紅毛人から『ゑれきてる』とともに譲り受けたものだが、詳しい話はもう少し後で語ることになる。
絵筆は背から首筋、そして脇へさらさらと動いていった。
源内の筆が脇の下を通って二の腕へ移動すると、マリアは泣き笑いの表情。
「あ・・・あひゃひゃ!」などと変な声を発し、からだをくねくねとさせるので絵筆が描く継ぎ目の線がミミズが這ったようにヨレヨレになってしまった。
「マリア!」
「ひぃぃ~・・・だってだってだって、・・・く、くすぐったいんだもん」
「人形のくせに、くすぐったいとはな。
最初のコメントを投稿しよう!