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源内は腰に下げた叺から煙管を取り出し、根付けから刻み莨をひとつまみ、煙管の先っぽの火皿に詰め、近くのろうそくの炎で火をつけた。
源内の吐き出す煙管の煙にマリアはケホケホと咳き込んだ。
その様子を見ていた源内は、ふうと息を付き、苦笑いを浮かべた。
「ほんと、お主まるで人間だな…。
さて、急がねば」
源内は煙管を勢い良く盆の縁に叩きつけると、カン!といい音が鳴り、火皿から燃えカスとなった刻み莨が落ちた。
* * *
「いったいいつまで待たせる気だー!!」
「早く始めろい!!」
予定の刻限を過ぎても出し物が始まらず、集まっている客たちが騒ぎ始めていた。
客の人数はたった10人。
だが、殆どが<ゑれき娘>と書かれた法被や手ぬぐい、うちわなど『関連グッズ』で身を固め、マリアが美しく描かれた錦絵=ブロマイドのようなもの を手にしている<常連>たち。
熱気に包まれた客席は、マリアの登場を今かいまかと待ちわび、しびれを切らしていた。
先ほど無理やり入れられた左官職人は、その中で窮屈そうに座り、周囲を恐る恐るキョロキョロ。
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