第一話 見世物小屋のマリア

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日本人が海外へ渡航(とこう)すること などを禁止した鎖国(さこく)政策の真っ只中(ただなか)。    西洋文明を受け入れ大変革(だいへんかく)が起こった明治維新(めいじいしん)まで、まだあと約100年という頃。 *    *    *  時は西暦1779年(安永(あんえい)八年)  (ところ)は大江戸 季節は初夏  大川(おおかわ)(隅田川下流)にかかる両国橋(りょうごくばし)の西側と東側には、大小の見世物小屋(みせものごや)がところ(せま)しと立ち並んでいた。  スマホやテレビがないこの時代  民草(たみくさ)にとって娯楽(ごらく)とは、芝居(しばい)見世物(みせもの)()さを()らすことだった。  しかし、常設(じょうせつ)された立派な建物で行われる歌舞伎(かぶき)は安くても百文(約2000円)という値段。  (ぜに)がない庶民(しょみん)でも気軽に楽しむことができたのは、十六~三十二文(320~640円くらい)木戸銭(きどせん)=入場料 で入ることができる見世物小屋(みせものごや)だった。  この見世物小屋で行われる出し物はじつにさまざま、バラエティに()んでいて     
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