第一話 見世物小屋のマリア

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この大川(隅田川)が、武蔵(むさし)下総(しもうさ)の<両国(りょうこく)>の(さかい)をなしたことが地名の由来(ゆらい)とされ、橋を(はさ)んで、西両国 ・東両国と呼ばれていた。 その西両国は現在の中央区東日本橋あたり。  この場所は、北には人気スポット  <浅草寺(せんそうじ)>  南には旅人宿(たびびとやど)(のき)(つら)ねる  <馬喰町(ばくろちょう)>  と、人が集まるのにバッチリな立地で  地方から江戸に出てきた旅人は 宿のある馬喰町(ばくろちょう)根城(ねじろ)にまず手始めに浅草の手前、両国へ足を伸ばす というのが江戸見物(えどけんぶつ)定番(ていばん)ルートであった。 さらにこの地には 大火事から橋を守るための火除地(ひよけち)として両国広小路(りょうごくひろこうじ)という大きな広場が作られていたこと、 火除地は火事対策のために常設(じょうせつ)の建物を作ることが禁止されていたため 空き地があればゲリラ的に店を開き、お(かみ)から何か言われれば、いつでも立ち退()くことができる仮設(かせつ)の見世物小屋にとってはまさにうってつけの場所だった。 そんな好立地(こうりっち)の両国橋の東西は見世物小屋でぎっしりと()()くされ、いつも大勢の人々で(にぎ)わっていた。  *    *    *       
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