第一話 見世物小屋のマリア

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 (ちな)みに、どれくらいの人が集まったのかというと、 東両国にある本所(ほんじょ)(いまの墨田区)の回向院(えこういん)というお寺で、 信州善光寺(しんしゅうぜんこうじ)出開帳(でがいちょう)本尊(ほんぞん)などめったに見ることができない仏像や寺宝を運んできて一般の人々に見せる(もよお)し)が行われた昨年は、 見世物小屋を訪れた客の数が、六十日間で延べ千六百万人という空前の参詣客(さんしきゃく)があったという記録が残っている。  江戸の人口はこの当時100万人くらいと推定されているが、1800年頃の世界の主要な都市は   北京 90 万人   ロンドン 86 万人   パリ 54 万人   ニューヨーク6万人   上海5万人 と言われているので 江戸は世界的に見ても飛び抜けた大都市であったといえる。 ちなみに現在の東京都の人口は江戸時代の9倍にあたる約930万人。  *    *    *  今年はこのときから比べればさすがに客足が減ったとはいうものの相変わらずの(にぎ)わいで、寄り()い立ち並んでいる小屋のそこかしこからは、常にお囃子(はやし)の声や三味線(しゃみせん)、呼び込みの口上(こうじょう)などが騒がしく聞こえていた。     
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