エピローグ

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 あらためて、みんなの顔を見てみた。おそらく私を含めてだが、みんな、いきいきとした顔をしている。  思えば、このクラブは今年の春まで、帰宅部だった。どこかのクラブに所属しなければならないという学校の方針に従うために創設された、形だけのクラブだった。30分だけの見せかけの練習しかしていなかった。そのクラブが、わずか8ヶ月で、全国大会出場を果たした。達成感に満ちあふれている。  ここまで、決して私一人の力ではたどりつくことはできなかった。素晴らしい仲間に恵まれていると心から思っている。  森崎恵美は、私がトレーニングを始めようとしたとき、一緒に仲間を集めてくれた。そして、用具を買うお金を貸してくれるように、叔父さんに頼んでくれた。私にとって、最初の協力者だ。  小清水渚は、練習試合とはいえ、わざと打たれるという屈辱に耐えてくれた。クラブが生まれ変わることができたのは、彼女のおかげだ。  能登綾佳は、あの試合で、這いつくばってでもベースを一周すると言ってくれた。素晴らしいガッツだ。本音を言えば、もう少しダイエットをしていてほしかったが。  進藤加奈は、文字通りのムードメーカーだ。心が折れそうになったとき、彼女の明るさに何度助けられたかわからない。  城ヶ崎キャプテンと、山本副キャプテンは、クラブを生まれ変わらせるために、一芝居を打ってくれた。おそらく私以上に、ソフトボールをやりたかったに違いない。二人とも、尊敬できる先輩だ。  そして、ここにはいないが、安藤沙紀が一番の立役者だ。私のために、姉を通じて副キャプテンにソフトボールを続けられるように頼んでくれた。私と友達になれてうれしかったと言っていたが、私も同じ気持ちだよ、沙紀ちゃん。  誰一人欠けていても、ここまで来れなかったと思う。私にとって、大切な仲間だ。私がこのクラブに入部して得ることのできた一番の宝物は、全国大会への切符ではなく、この仲間たちかもしれない。  私はそんな仲間たちに向かって、もう一度心の中で「乾杯」と言った。
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