最終章

10/10
37人が本棚に入れています
本棚に追加
/120ページ
 ふと見ると、ホームベースの周りに、チームメイトが全員集まっていた。渚も。恵美も。加奈も。有里も。乃亜も。みんなそれぞれ、手拍子をたたいたり、ガンバレと口に出したりしている。それを励みに、綾佳は少しずつ進んでいった。ホームベースのすぐ手前まで来ると、思い切り手を伸ばした。  そしてついに。その手がホームベースに触れた。ホームランが成立した。  その瞬間、大歓声が起きた。泣いている者もいた。綾佳に抱きつく者もいた。  それを見届けた香織は、そのまま大の字になった。  勝ったんだ。ついに勝ったんだ。全国大会に行けたんだ。  帰宅部だったソフトボール部が。弱小だったソフトボール部が。  とめどなく、涙があふれてきた。もうこの涙は止める必要がない。去年の夏流せなかった嬉し涙だから。  頭越しに、チームメイトたちが近づいてくるのが見えた。綾佳も、二人の選手に両肩を担がれてこちらに向かっている。  自分を信じてついてきてくれた仲間たち。彼女たちがいなければ、決してここまで来ることはなかった。かけがえのない、大切な仲間だ。  香織は大の字になったまま、空に向かって大声で叫んだ。  「みんな、本当に、ありがとう!!!」
/120ページ

最初のコメントを投稿しよう!