エピローグ

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エピローグ

 「かんぱ~い!」  私たちが全国大会出場を決めた二日後、恵美の叔父である森崎店長が経営する新聞販売店で、ささやかな祝勝会が行われた。週に一度、この店で折り込みチラシの作業を手伝わせてもらい、その代わりに用具を買うお金を貸してもらった。そして今回、祝勝会の場所として使わせてもらうことになったのだ。  大きな目標は達成できたが、もちろんこれで終わりではない。この後、全国大会という大きな舞台が待っている。ただ私は、そのことにあまりこだわっていない。全国大会で勝つということは、そんなに簡単なことではない。今まで以上に手ごわい相手と対戦しなければならない。県の代表として、出場できただけでもよかったと思うべきだろう。  さいわい、綾佳のケガは大したことはなかった。無理して最後まで出場しようとしたために立ち上がれない状態になったが、その後すぐに治療して、事なきを得た。  後から聞いた話だが、あの試合で私がとった行動は、必ずしも必要なことではなかったらしい。あの場合、ホームランを打った綾佳に代走を出して、そのランナーがベースを一周すれば、ホームランは成立したそうだ。審判は知らなかったのだろうか。それとも、公平を期するために、あえて何も言わなかったのだろうか。ただ、そのおかげで私たちの絆はより深まったような気がする。そう考えると、決して無駄なことではなかったと言える。  朗報が二つある。まず、私をバイク事故から救ってくれた大原健太が、リハビリを終えて練習に復帰した。年末の全国大会出場はならなかったが、次の大会に向けて頑張ってほしい。  そしてもう一つ。昨日、城ヶ崎キャプテンが学校に呼び出されたが、それによると、今回の成果が評価されて、どうやら私たちのクラブの同好会への格下げが取り消されそうだ。そうなると、来年の春からもクラブとして、全国大会を目指すことができる。
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