第三章

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 みんなの顔を見た。目がいきいきしている。実は香織は、少し不安を感じていた。メンバーの中には、香織の計画に無理矢理つき合わされている人がいるのではないか。だとしたら、香織はそのメンバーの高校生活を台無しにするのではないか、だが、その心配はどうやら無用のようだ。  そして香織は、この時確信した。このメンバーなら、必ず上手くいく。卒業までに、全国大会に出場するのも夢ではない。  「ところでカオリン、お金どうするの?」恵美が聞いた。  「え? お金?」  「本格的に練習するんだったら、用具が必要でしょ。そのお金はあるの?」  考えてもいなかった。確かにそのとおりだ。中学までは、クラブに必要な用具はそろっていた。しかし、この高校のソフトボール部には、そろっているわけがない。かりにあったとしても、香織たちが勝手に使えるはずがない。必要な用具は、自分たちで用意しなければならないのだ。  「それは……」  「ひょっとして、考えてなかったの? しっかりしてよ」  香織は、返す言葉がなかった。
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