第一章

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 午後からは、クラブ見学会が行われた。各クラブが、グラウンドや体育館、それぞれの部室で活動を行い、新入生は、それを見学して入部するクラブを決める。  香織は、さすがに沙紀をソフトボール部に誘う気にはなれなかった。健太の失態のおかげで、沙紀に笑顔が戻ったものの、前日の沙紀の表情の変化は、まだ香織の心にひっかかっていた。さりげなくどのクラブに入部するのか聞いてみたが、運動部は苦手なので、文化部をひと通りまわってみると言っていた。 沙紀と別れた香織は、ソフトボールの練習場所へ向かった。その途中、グラウンドでは、他の運動部が練習をしていた。サッカー部、野球部、ハンドボール部、陸上部……。それぞれのクラブの練習場所の近くでは、新入生が練習を見学したり、先輩から話を聞いたりしていた。  香織はもちろん、他のクラブに入部するつもりはなかったが、各クラブが練習している様子を眺めていた。この人たちも、大きな目標を持って頑張っている。その様子を見て、香織は身が引きしまる思いがした。よし、私も頑張ろう。  そして、ついにソフトボール部の練習場所に着いた。ちょうど、キャッチボールをしているところだった。この人たちが、私の先輩になるんだ。そんな気持ちで、香織は練習の様子を見つめていた。  と、その時、香織はあることに気づいた。キャッチボールをしている先輩たちの体操服が、全員エンジ色なのである。緑風高校では、各学年ごとに、体操服の色が異なる。三年生は青色、二年生はエンジ色、一年生はオレンジ色である。つまり、この先輩たちは、全員二年生ということになる。何故、三年生がいないのか。受験を控えているのは分かるが、もうすぐ県の春季大会が始まるし、インターハイの予選もある。三年生が引退するのは、その後のはずだ。他のクラブを見てみると、ユニフォームを着用しているところもあるが、青色の体操服を着ている人もいる。三年生が活動しているクラブもあるのだ。ソフトボール部に三年生がいないのは何故なのか。  
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