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「もし、大丈夫ですか?」
息はしていたし、血の気も通っている。女性も子供も生きている事は間違いなかった。
「もしもし、失礼しますよ!」
顔を近づけてみたが、酒の臭いがしなかった。酔っぱらって座り込んでいるわけではないようだ。
「本部、教会前にて外国人と思われる女性と子供を発見。意識がありません。救急の手配をお願いします!」
病院に搬送された女性は、翌日意識を回復した。しかし、彼女は自分の名と子供の名以外は記憶を失っていた。
身元の手掛かりになりそうなのは、着ていた着衣と子供が身に付けていた小さな布の袋のみ。
親子が着ていた服はトーガと呼ばれる物で、その事から教会の関係者かと思われた。
しかし、親子の身元に関する情報は得られず子供の袋に入っていたのは白い鳥の羽が一枚のみだった。
その後親子は発見された教会にて保護される事となる。
彼女達は何者なのか。彼女自身も知らぬそれが明らかになるまで、十年以上の年月を要するのだった。
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