零巻 晴ノ日01

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 じわりと涙が滲んできた。きっと、眩しすぎる陽光が、目に染みたせいだ。ぐっとこらえて目を閉じる。すると、目じりに素敵な皺を刻んだ老婆の笑顔が浮かんできた。ふうわりと微笑んでいる。印象的な笑顔だった。大好きだった。  ―――あぁ、こんなんじゃ、身が持たない。  心がぐっと沈み込む。これだって、わたしにとっては・・・・・・わたしの望む未来にとっては、日常になることだろうに。  俯いて、ふぅっとため息を吐いた。ここで乗り越えなければ。ここで踏ん張らなければ。  くじけてはダメだ、負けてしまってはダメなんだ。  きゅっと唇を?み締めたわたしの前に、二人の少年が現れたのは突然の事だった。  そして、わたしが彼らに声をかけたのは、たぶん・・・偶然だった。  彼らがあんなにもボロボロになっていなかったら、わたしは踏みとどまったりしなかった。  彼らのうちの片方がよろめいたりしなければ、わたしは彼らに手を差し伸べたりはしなかった。あれ程までに傷ついていなければ、あんなに必死な瞳をしていなければ、わたしがこんなに落ち込んでいなければ。  助けようと手を差し伸べたりしなかっただろうし、逃げずに手当てをしようとしていなかっただろう。彼らがあんなに傷ついて、あんなに必死じゃなかったら・・・声を掛けられても、反応なんてしていなかった。     
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