訪問者

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聖なる夜。街中が賑やかで華やかで、家しか自分の居場所が無くなるそんな日。外はもう太陽が隠れているが、眉をひそめるほどの光がカーテンを閉めているのに家の中に入ってくる。 「クリスマスが何だってんだ」 高橋 聖都は誰もいない部屋の中、電気も付けずにベッドで転がりながら一人でつぶやいた。今日はよりによってバイトは休み。家族も俺を置いてそそくさと夫婦で出掛けてしまった。妹もいるが、まあ今日はクリスマスだからな。 午後18:00、フリーターの俺は何もすることが無く、朝からこの調子だ。世間がクリスマスだなんだって浮かれている間に、その貴重な時間を全て睡眠に当てた。なんだかんだ、俺のクリスマスはいつも独りだ。だからあと6時間我慢すれば、今年のクリスマスも終わるだろう。 そう思うのだが、今日に限って時間の流れがとんでもなく遅く感じるのだ。いや、今日に限ったことじゃあないが。自分の都合の悪い時なんてものはいつもだ。誰が時計の針を止めてるんじゃないかと思う。 「あー、くそっ」 今日1日中整えていない髪の毛を掻きむしる。完全なる八つ当たりだ。 気を紛らわそうと、ベッドから起き上がり、今まで気配を消していたテレビの電源を入れる。すると、予想通り街に光り輝くイルミネーションの紹介や、クリスマス限定の恋愛ドラマなどが放送されていた。眉にさらに力が加わる。 俺はクリスマスの話題を一切放送しなさそうな、長寿のクイズ番組を見ることにした。さすがにテレビを見るのには暗いので電気を付ける。ぐぅ、と腹の虫が主張しだしたので、冷蔵庫からキンキンに冷えた缶ジュースと妹が作ったお菓子(ただし余り)を取り、再びベッドに腰掛ける。 意外と妹のお菓子が美味しい。これを思う存分食べられる奴は羨ましい限りだ。俺にもそんな彼女が欲しい。あ、妹はもちろん論外だ。勘違いはするなよ。 少しの間お菓子に気を取られていると、テレビから、どっと笑い声が溢れる。どうやら若手芸人が珍回答したようだ。あまりにばかばかしい内容だからつい、口の端が上がった。 すると、突然電子音が鳴り響いた。 「はーい」 妹や両親が帰ってくる時間にしては早い。配達か何かだろう、と急ぎ足で部屋を出て玄関に向かう。 ドアスコープから覗いてみると、やけに着飾った端正な顔をした男が立っていた。黒髪短髪のイケメンだ。そして明らかに配達ではなさそうだ。
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