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「なんですか」
「お前が高橋 聖都か」
「は?」
扉を開けて、一言。なぜこいつは俺の名前を知っているんだ。
「違うのか」
「いや、俺が高橋 聖都ですけど…」
「なら話は早い。早く中に入れろ」
有無を言わさぬ勢いと威圧感で、拒否する前に家に上がられてしまう。いやいや、さすがに見ず知らずの人を上げられねぇよ。
「ちょ、待って下さい!勝手に上がんないで」
リビングルームに行こうとしていた男の手首をつかみ引き止める。…相当鍛えてんなこれ。
変に冷や汗をかく。これじゃあいざ暴力を振るわれたら勝ち目はない。
「なんだ、何も聞いていないのか?」
「は?いったい何のことっすか。てかなんで俺の名前知ってんですか」
はぁ、とこっちがつきたい溜息を男が吐く。いったいなんだってんだよ。
「俺は、ナオト。」
「はぁ、…高橋 聖都っす」
何故か、寒い玄関先で自己紹介を始めるナオトさん?一応俺も自己紹介をしたけど、未だにこいつがなんでここに来たのかさっぱりだ。
「説明するからとりあえず上がらせてもらう。事情が変わったから、説明した後までは何もしない」
最後の言葉にさらに冷や汗をかく。説明が終わったら俺、死んでる気がする。
見るからに萎えている俺を見てナオトさんは、ふっと笑って俺の頭に優しく手を置いた。
…これ女の子にしたら1発じゃん。という意味を込めて俺より身長の高いナオトさんを睨む。
「それで、ナオトさんはなんでここに?」
テーブルを挟んで、向かい合わせに椅子に腰掛ける。遠慮も気遣いもない図々しい座り方に、片方の眉が上がった。
「高橋 美奈からお願いされたからだ」
「はぁ?なんで美奈が」
「兄さんが毎年クリスマスの日は機嫌が悪くなるから、だそうだ」
美奈は俺の妹だ。そして何より俺は今溜息しか出てこない。溜息とともに新たな疑問が生まれる。
「クリスマスに機嫌が悪くなるのは、俺も分かってるんすけどね。でもなんであいつはナオトさん呼んだんですか」
「オレしか今日予定空いてる奴が居なかったんだと」
「なんすかそれ。てかナオトさん美奈とどんな関係すか?あと今日くらいは彼女さんと居てやってくださいよ」
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