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大学生になりたての頃、ある女に出会った。名前は高橋 美奈。同じ学部で、たまたま講義の時隣に座ったのがきっかけだ。
自分の容姿はそれなりに理解をしているため、ジロジロ見られるのも、少しは慣れてきた。…つもりだ。だから、隣の席で高橋 美奈がちらちらとこっちを見てくるのを知りながら、無視をしていた。
講義が終わって、そそくさと教室を出ていこうとするとさっき隣に座っていた女が興奮気味に話しかけてきた。普段から俺はあまり自分から話さないか、話したとしても短文だ。そんな俺のコミュニケーション能力なんてものはたかが知れている。めんどくさいから早く終わらそう、と声をかけられた方に振り向く。
「ねぇ!君、菅原 ナオトでしょ?」
「…そうだけど」
「友達になって!!」
「あ?」
これが最初に美奈と話したきっかけだ。正直、今どき面と向かって友達になって、という人は初めて見た。驚きで素っ頓狂な声を上げるくらいには。断ることすらめんどくさいという感情に支配され、二つ返事でOKしたが、ここからがさらにうるさかった。
当時俺が好きだった、同級生をつい目で追っていると美奈がそれに気づき、俺が同性愛者だとバレた。俺はそんなの気にしないので、バレてもあぁ、またかとなるだけだ。そして離れていくだけ。俺に近づくのは、大抵俺目当てだから。しかし、美奈は違っていた。
「やだ!ナオトったら、そういうのは早く行ってよ!」
と、またしても興奮気味に言うのだ。そして美奈もあることを俺に打ち明けた。そう、美奈は大が付くほどの腐女子。だからなのか、そういうことに関しては逆に関心を抱いてくる。
ちなみに一年の時に好きだったやつは、恋人がいて…今となってはほろ苦い思い出だけになった。
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