1.捕らわれた娘

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1.捕らわれた娘

「おい、さっさと歩け!」 「今すぐ殺しても構わないんだぞ!」 野蛮な兵士の声が自室にまで響き渡る。多分、兵士達は自室の横の廊下にいるのだろう。それにしても、うるさい、うるさすぎる。目覚めがこんな野蛮な兵士の声だなんて最悪だ。 そんな思考を巡らせながら布団から這い出て自室を出る。まだ頭がはっきりしないが、なんとか声のした方へと向かう。 「おい、止まれ!」 二人いた兵士の一方が、僕の姿に気がつき、もう一方の兵士に大声で知らせる。うるさい、別に慌てなくていいから静かにしてくれ。 「皇子、おはようございます!朝早くから御勤めご苦労様です!」 二人は僕に向かって敬礼する。黒髪の兵士と赤髪の兵士。二人とも白い軍服に金色の勲章が輝いている。 「お前達もご苦労様。ところで、今は何の仕事中?」 「そ、それはですね……。」 兵士は言いづらそうな表情をする。 「……あの、いつまで待たせるんですかー?殺すなら早くしてくださいよ。」 その時、ひょこりと兵士達の後ろから銀髪の少女が顔を出した。藤色の瞳にダイヤのように輝く銀色の髪。視察のとき、見た玩具店にいた人形のような容姿だ。顔立ちから察するに、この国の者ではないだろう。     
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