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「よっていらっしゃい、見てらっしゃい。異国の服なら、あたしの店によっといで。」
明るい呼び込みの声が聞こえる。しかし、店主の姿は見えず、ボロい木のドアがあるだけだ。店、といえるようなものは存在せず、空き地に木のドアが1つだけぽつんと立っている。
「えっと、ここは……?」
あまりにも奇妙な光景に困惑し、尋ねる。
「服屋だよ。まぁ、入り方がちょっと特殊なだけど。」
皇子はガチャリとドアを開ける。ドアをあけると、そこには真っ暗な空間が広がっていた。広がっていた、といっても人二人がやっと入れるサイズだ。
「ヒュラ、ちゃんと捕まってろよ。揺れるぞ。」
「は、はい。」
そっと皇子の腕を掴む。
皇子はなぜか壁を叩き出した。
前に一回。
左に二回。
右に三回。
後ろに二回。
また前に一回。
すると、ガガッと歯車が動き出すかのような音がし、部屋中に大きな振動が伝わる。高いところから落ちるような感覚に襲われ、思わず目をつぶったおよそ、十秒後。目を開けると、まるで高級ブティックのような光景が広がっていた。
「あら、また来たのかい。皇子様。そこの可愛いのはなんだい?」
入り口の横にあるカウンターには、黒髪をきちん、と結い、紅い結い紐を結んだ女性がいた。先ほど聞こえた呼び込みの声の主だろう。
「新しく入った護衛だよ。持ってる服があまりにも少ないから、買いに来たんだ。こいつに合いそうなの、選んでやってくれ。」
「ああ、構わないよ。とびっきり可愛いのを選んでやる。ほら、そこの、えっと「ヒュラと申します。」
「……ヒュラ、おいで。皇子はそこで待ってな。」
「ああ。」
私は試着室と思われる部屋へと入っていった。
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