3 この国は

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「よっていらっしゃい、見てらっしゃい。異国の服なら、あたしの店によっといで。」 明るい呼び込みの声が聞こえる。しかし、店主の姿は見えず、ボロい木のドアがあるだけだ。店、といえるようなものは存在せず、空き地に木のドアが1つだけぽつんと立っている。 「えっと、ここは……?」 あまりにも奇妙な光景に困惑し、尋ねる。 「服屋だよ。まぁ、入り方がちょっと特殊なだけど。」 皇子はガチャリとドアを開ける。ドアをあけると、そこには真っ暗な空間が広がっていた。広がっていた、といっても人二人がやっと入れるサイズだ。 「ヒュラ、ちゃんと捕まってろよ。揺れるぞ。」 「は、はい。」 そっと皇子の腕を掴む。 皇子はなぜか壁を叩き出した。 前に一回。 左に二回。 右に三回。 後ろに二回。 また前に一回。 すると、ガガッと歯車が動き出すかのような音がし、部屋中に大きな振動が伝わる。高いところから落ちるような感覚に襲われ、思わず目をつぶったおよそ、十秒後。目を開けると、まるで高級ブティックのような光景が広がっていた。 「あら、また来たのかい。皇子様。そこの可愛いのはなんだい?」 入り口の横にあるカウンターには、黒髪をきちん、と結い、紅い結い紐を結んだ女性がいた。先ほど聞こえた呼び込みの声の主だろう。 「新しく入った護衛だよ。持ってる服があまりにも少ないから、買いに来たんだ。こいつに合いそうなの、選んでやってくれ。」 「ああ、構わないよ。とびっきり可愛いのを選んでやる。ほら、そこの、えっと「ヒュラと申します。」 「……ヒュラ、おいで。皇子はそこで待ってな。」 「ああ。」 私は試着室と思われる部屋へと入っていった。
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