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電波は水みたいなものの中にあると思う。流れたり滞ったり、目には見えなくても実は空気の中に存在していたり。
僕たちは普段、霧のような雲の中のような所を漂っている。
「ねぇ、がんちゃん」
僕たちは存在しているだけで、意思があるわけでもなければ自由に動き回れるわけでもない。
「ねぇ、がんちゃん!」
僕たちは電波だから。
「暇だ!」
「うるさいな!」
「え!? 聞こえてた!?」
「え!? あーちゃんと話せるのか?」
僕たちは電波で、自由な手足や口なんかは持っていないはずだ。だから少し離れた所を漂うあーちゃんと話をした事はなかった。
「がんちゃんが黒髪の美青年に見える」
「僕にはあーちゃんが茶髪のやんちゃな少年に見えるよ」
「少年はないだろう。たぶん俺たち同い年だぞ」
こういう時はゆっくり思考を巡らせるべきだ。そうだ、思考だ。僕はいつから思考していた? それが出来るようになったのはいつだろう。
「がんちゃん! みて、見て、この川!」
「ゆっくり思考させて!」
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