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強制的に遮断されたので仕方なく、言われるままに川を覗き込んでみる。それは言葉の流れる川だった。少なくとも僕にはそう見えている。澄んだ水に墨を一滴ぱたっと垂らしたのだろう。それが二滴、三滴となり、水に溶けて消えてしまう事のない墨は川面に蛇行した筋状の模様を付ける。それが僕には言葉に見えているのだ。
「楽しみだってさ。期待してるって書いてあるぞ!」
「あーちゃんにも言葉に見えているのか?」
「おう」
僕だけではないらしい。となると、この川の流れは電波の流れという事か。流れるいくつもの言葉を見ていると、自分に語りかけているような錯覚を起こす。
「あれ、不安だって」
指をさしてあーちゃんに見せると、だるそうに僕を見上げる。
「そういうマイナスなものを見つけるなって。いい事だけ見ていこうぜ」
「人生はそうもいかないだろう」
「がんちゃんは真面目だったのか。見てるだけだと分からなかったなぁ。俺はどんな感じ?」
「自由だな。それから見ているだけでも分かった事は、やる気が続かないよね。ガーッと行ってぷつっと切れるのを何度も見た」
「まあな。ていうか、これ何? 俺の認識でおっけー?」
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