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客間に通されるとき、老人は遠路遥々という言葉を口にした。都内での移動だったから、実際には大した距離ではなかったのだが、時間を割いてくれたことへのお礼の気持ちとのことだった。
「お二人に会えて嬉しく思っております。あの手紙は、大変に不審だったでしょう」
「ええ、私は美術館で拾ったものですから、尚更の驚きでした――なぜ、ああいったことを?」由紀子は長年の疑問を、角の立たないように尋ねた。
「実は――私はこの雑貨店以外に、”結び屋”という稼業をやっておりまして」
「結び屋?」
聞きなれない言葉に由紀子は目を丸くする。すぐさま敬のほうを振り向いたが、「知らないよ」というジェスチャーを返された。
「ええ、恋のキューピッドというのでしょうか。中には依頼もありますが、ほとんどが私の気まぐれによるものでして――、お二人もそうでした。怖がらせてしまって申し訳ありません」
結び屋の老人は深々と頭を下げた。いえいえ、と二人は声を揃える。
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