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「有難いお言葉、感謝致す」  そう述べてから顔を上げたロステアールは、内心で竜の言葉に疑問を抱いていた。竜はまるで人間になど興味がないような口ぶりだったが、では何故こうして自分と話をしているのだろうか。  ロステアールの疑問に気づいたのか、竜はずいっとその顔を彼へと近づけた。これがロステアールでなければ、失神していたことだろう。 『ここへは、王の命により次元の裂け目を修復しに来ただけだ。このまま放っておいては、色々と面倒だからな。そこでたまたまお前を見かけた。長き時を生きてきたが、お前のような異端児は見たことがない。だから少し興味があった。まあ、お前に自覚がない以上、そこらを這っている人間と何ら変わりないようだが』 「……異端、と仰るか」 『異端だとも。半端者であるとも言う。まったく、憐れなことだ』  言葉通り憐れむような声が脳内に響いたが、ロステアールは竜が何を言っているのか理解できなかった。 『さて、無駄話が過ぎたな。さっさとこの亀裂を閉じてしまうか』  そう言った竜が、亀裂の向こうへと頭を戻していく。それに向かい、ロステアールは思わず声をかけていた。     
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