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そうは言っても体はしんどいのだと抗議する間もなく、唇を塞がれた。
暁人の中に入ったままだった市杵島が、復活の兆しを見せる。暁人は観念して、市杵島から与えられる快楽に耽溺した。
翌日。昼近くに暁人は目を覚ました。結局朝方まで抱き合い、気絶するように眠りに落ちた。傍らでは、市杵島が暁人を抱きしめたまま眠っている。思った以上に体への負担は大きく、身じろぐのも億劫だ。
けれど、その痛みは嫌ではなかった。本当に市杵島と結ばれた証のように思えた。
暁人は顔だけ動かした。薄く開かれた障子の隙間から、青く晴れ渡った空が覗いている。流れてくる風は少し涼しく、かすかに秋の気配を滲ませていた。
澄んだ天空の青を見上げ、暁人は思った。
人の行く末が空にあるのなら、人の思い出はどこへ行くのだろう。
決して、なくなるわけではない。
悲しいことも嬉しいことも、よいことも悪いことも、そうして過去を積み重ねて今を生きていくのだ。
願わくは、その隣には好きな人がいてほしい。その人とともに歩んでいけたらと思う。
「……あー、おはよう」
市杵島の間延びした声がした。その顔は相変わらずしまりがなかったが、幸せそうだった。暁人は顔を赤らめ、小さく答えた。
「……おはようございます」
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