第7章 普通じゃないことも普通になる時

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「大学の保健センターのご紹介ということですが、どうされましたか?」 手紙に俺の過食のこと、不眠のことは書かれていなかったのかな・・・? いや、書かれているけどあえて聞いているのかな? 「えっとーー最近眠れなくて・・・あと、いつも食べては吐くんです」 醜い俺の醜い心の汚れも、言葉にするとそんな一言で終わりだ。 口にした自分自身が「あれ?それだけだっけ?」と驚いてしまった。 「なるほど。眠れないのは毎晩ですか?」 先生が質問形式で詳細を聞いてくれた。 何もしないと毎晩眠れないこと。でも、過食・嘔吐をすると眠れること。 過食・嘔吐はほぼ毎日していること。 それが儀式のようになっていること。 自分が醜いこと。太っている外見の醜さに耐えられないこと。 30分ほどかけてすべてを話した。 実際は細身の俺が太っている自分が許せないと話しても、先生は「そんなことないですよ」と否定はしなかった。 なるほど。これが心療内科か。 話をすべて聞いてくれるんだな、と思った。 これからカウンセリングとかが始まって、俺の心の汚れを取り除いてくれるのかな・・・? しかし先生から返ってきた言葉は予想と違った。 「では、とりあえず軽い睡眠導入剤を試してみましょう」 眠れるようになる薬を処方され、それ以上はなにもなかった。 「とりあえず1週間ぶん出しますので、また来週きてください」 過食・嘔吐のほうが変なことだと思っていたけれど、そこには触れず、ただ睡眠導入剤だけが処方された。 なんで? しかし俺は言われるがままに翌週の予約を入れ、初めての心療内科を後にした。 そのまますぐ目の前にある薬局に入り、睡眠導入剤を受け取った。 デパスという薬だった。
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