176人が本棚に入れています
本棚に追加
「大学の保健センターのご紹介ということですが、どうされましたか?」
手紙に俺の過食のこと、不眠のことは書かれていなかったのかな・・・?
いや、書かれているけどあえて聞いているのかな?
「えっとーー最近眠れなくて・・・あと、いつも食べては吐くんです」
醜い俺の醜い心の汚れも、言葉にするとそんな一言で終わりだ。
口にした自分自身が「あれ?それだけだっけ?」と驚いてしまった。
「なるほど。眠れないのは毎晩ですか?」
先生が質問形式で詳細を聞いてくれた。
何もしないと毎晩眠れないこと。でも、過食・嘔吐をすると眠れること。
過食・嘔吐はほぼ毎日していること。
それが儀式のようになっていること。
自分が醜いこと。太っている外見の醜さに耐えられないこと。
30分ほどかけてすべてを話した。
実際は細身の俺が太っている自分が許せないと話しても、先生は「そんなことないですよ」と否定はしなかった。
なるほど。これが心療内科か。
話をすべて聞いてくれるんだな、と思った。
これからカウンセリングとかが始まって、俺の心の汚れを取り除いてくれるのかな・・・?
しかし先生から返ってきた言葉は予想と違った。
「では、とりあえず軽い睡眠導入剤を試してみましょう」
眠れるようになる薬を処方され、それ以上はなにもなかった。
「とりあえず1週間ぶん出しますので、また来週きてください」
過食・嘔吐のほうが変なことだと思っていたけれど、そこには触れず、ただ睡眠導入剤だけが処方された。
なんで?
しかし俺は言われるがままに翌週の予約を入れ、初めての心療内科を後にした。
そのまますぐ目の前にある薬局に入り、睡眠導入剤を受け取った。
デパスという薬だった。
最初のコメントを投稿しよう!