彼と彼女。

2/2
前へ
/15ページ
次へ
生華の笑みを聞き、和はため息をついた。 「ストーカー、って。ひどいなぁ」  ハハッと笑い、生華を見る。    濡れた薄手の服が透け、肌の色が露になっていた。 「ひどいって、なにが?着いてきてたんでしょう?」  くるりと後ろを向き、軽く微笑みながら歩いていく。  どうやら、帰るようだ。海に沈んだ男性を一瞬も振り返ろうとせずに。    「一応君の幼なじみだし、2つ年上なんだけど?」 「あら、知ってるわよ。バカにしないでよ」  和の言葉を軽く流す。 「私そんなに物忘れ激しくないわよ」  ふざけたように舌を出し、ベーっとでも言いそうな勢いで顔をしかめる。  秋の冷たい風が頬を切る。 「生華ちゃん、寒くないの?」 「寒いわよ。当たり前じゃない?全身びしょ濡れよ」  当たり前、と言われ、そりゃそうかと思い和は生華の隣に並んだ。 「生華ちゃん、これ。」 そう言い、着ていたパーカーを生華にかけた。  生華は、あたりまえ、のようにそれに袖を通して歩きだした。
/15ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加