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絶対にハズさないプレゼント
60年以上生きてきて、飛行機に乗ったのは初めてだった。
空港についた途端、今が12月という事を忘れてしまいそうになるくらい、暖かな空気に出迎えられた。
到着ロビーに着くと、あの青年が私に気づき、駆け寄ってきた。
「お疲れ様でした。わざわざすみません、こんな遠くまで……」
「いや……それより私の我儘を聞いてくれてありがとうございます」
あの後、すぐに私は名刺に書かれた番号へ連絡をした。
「佳代……お母さんは?」
空港に止めてあった車に乗り、後部座席から運転席に座る青年に問い掛ける。
「家にいます。僕は誕生日のケーキを買いに行ってくるって出てきました」
そう言って視線を移した助手席には、ケーキ屋の紙袋が置いてあった。
「ご主人には何と?」
「包み隠さず話しました。是非会いに来て欲しいと言われました」
私は車窓に流れる初めて見る景色を見ながら「感謝しなくては……」と呟いた。
「もうすぐ着きます」
青年の言葉に鼓動と共に、膝の上に置かれた紙袋に入った小箱が車が揺れる度にカタカタと音を鳴らす。
彼女は喜んでくれるだろうか。
あの頃のようにオレンジ色の笑顔を見せてくれるだろうか。
この……トパーズのような。
最近知ったが、この石には持つ人にとって必要なものと出会わせてくれる力があるらしい。
「君が私のところへ来てくれたのも、この石のお陰かもしれないな……」
そう呟いた声は、青年の「ここです」という声に掻き消された。
車が停ると、エンジン音に気づいたのか、少しして玄関の引き戸がゆっくりと開いた。
さあ――今度は私が“絶対にハズさないプレゼント”を贈る番だ。
私は車のドアを開くと、右足をゆっくりと地面へ着け顔を上げた。
【了】
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