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第三章 元勇者
対応に出たジング王国の元勇者は、グフドムの顔をしげしげと見つめた。
「おぬしはもしかして、グフドム殿か?」
「はい、そうであります。今、そう名乗ったばかりですが」
「すまぬ。最近耳が遠くなってしまっての。それでわしに何か用事かの?」
「実は・・・・」
グフドムは大きな声で、王様から頼まれたことを話して聞かせた。
「そうであったか。本来ならばわしが行わなければならないことを、おぬしに押し付けてしまったようで、申し訳ない」
「いえ、そんなことは。気にしないでください」
グフドムは大きな声で言った。
「実はおぬしも大活躍したお隣の国の大事件の時、わしもダバイン討伐に向かうつもりだったのだ。しかし王様が隣国へ向かうことを許してくれなかった。もちろんわしのことを思ってのことだったと思うが、わしはダバインと戦って残り少ない勇者生活に花を添えるつもりだったのに、王様は頑としてわしを隣国に行かせることを拒んだ。それ以来、王様との関係がぎくしゃくしてしまっての」
「そうですか」
「わしも若い頃は跡継ぎの勇者をなんとかせねばと思っておった。わしの子は女の子一人だし、他人の子でもいいから適任なるものはいないかと気にはかけておったのだが、良い者を探し出せずにそのままずるずると歳を重ねてしまった」
「それでは勇者となれそうな者の当てはないのですか?」
「当てはない」
「ありませんか」
グフドムは落胆したように言った。
「おぬしには申し訳ないが、当ては全くないのだよ」
元勇者はきっぱりといった。
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