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第四章 武道家
グフドムは元勇者から武道家の家の場所を聞き、そこに行った。
武道家の小さな道場では、小さな子供たちがきゃあきゃあ騒ぎながら木の棒を振っていた。
「ごめん下さいまし」
グフドムが入り口で呼びかけると、子供たちを相手にしていた武道家が来た。
子供たちはすぐにワーワー言って道場内を走り回り始めた。
「これ! お客人だ。静かにしていなさい」
武道家にたしなめられた子供たちは一瞬おとなしくなったが、またすぐに道場内を走り出した。
「おや、これはグフドム殿ではあるまいか」
「覚えておいでですか。久しぶりでございます」
「おい、おばあさんに、客人が来たからお茶を入れるように言ってきてくれ」
武道家は近くを走っていた子供を捕まえて言った。
子供は返事をしてピューッと飛んでいった。
「何か御用で?」
武道家が上り口に腰かけたので、グフドムも隣に座った。
「それが・・・・」
グフドムは王様から頼まれたことと、元勇者の家に行ったことを話した。
「そうでありまするか。ごらんの通りここは小さな子供たちしかおりませぬ。この国では、働ける年齢になると、皆畑に出たり、家に籠って家業を行うようになり、剣術を学ぼうなどという者は一人もおりませぬ。ここの道場は忙しい親の代わりに子供の面倒を見る託児所のようなものでありまする。ですから勇者になれそうな人物といわれましても、とんと当てはござりませぬ」
「そうですか」
「私めも冒険に出なくなってから、こんな子供の相手ばかりで、剣術の腕もすっかり錆びついてしまいましたわ」
「そうですか」
グフドムは剣術の修行のために旅をしているということは黙っておくことにした。
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