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実は言うとボルソ家の当主 マロッチェオ・ボルソと隣のアメリア達の父は年が近く、昔から仲は良くない。
というよりは、マロッチェオ自身が気に入らないだけなのだ。
それもそうだろう。
多くの英雄を出したボルソ家は今や過去の産物。
ボルソ家に代々伝わる剣術だって形だけで、実戦で通じるかどうか・・。
領の名誉を上げようと、数年前に出陣をしたが同盟国の裏切りによって、逃げるのに精一杯。活躍が出来ずに終わった。
これはボルソ家だけではなく、多くの騎士貴族が苦汁をなめさせられた。
だか、隣のヴィクトリア領は違う。
商人貴族のクセにボルソ家より有名なヴィクトリア家。
王都でボルソ領の話をしても「ボルソ領?あぁ、ヴィクトリア領のとなりにある」としか認識はないのだ。
しまいには騎士貴族であることさえ忘れ去られる。
「・・・ヴィクトリア領は本当に羨ましいよ。山も海もあって貿易だって盛んだ。我が領になればいいのに・・・。」
「お義父様、何か言った?」
「すまない、マリア。ただのひとり言だよ。」
マリアは何も言えなかった。
これ以上、何を言ってもはぐらかされてしまいそうだから。
領地のことは正直に言ってわからない。
わからないけど、お義父様がつらいのは分かる。
この国が大変だということもわかる。
(何か私が出来ることをしなきゃ・・・)
お義父様の為に。
領民の為に。
この国の為に。
(私がこの国を、セイント王国を救うんだ。)
マリアは持っていたナイフとフォークをキュッと握りしめた。
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