ぼくの優しいサンタさん

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小気味よい音をさせてワインの蓋を忠が開けると、シャンパン用のグラスにワインを注いだ。それを手に持ってグラスを傾けながら「メリークリスマス」と二人でタイミングを合わせて告げ、クリスマスの食事が始まる。 忠が大学生になって、祐輔の家に転がり込んでからずっと変わらないイベントだった。 初めの頃は、「僕のことは気にしないで、彼女とか友達と遊びに行ってきなよ」と言っていた祐輔だったが、さすがに5年以上続いたところで何も言わなくなり、忠の好物を作ってくれるようになった。  流しっぱなしにしているテレビからは、クリスマス特集が流れ、煌びやかなイルミネーションが映し出される。 「綺麗だね。なんか毎年レベルがアップしてる感じだ」 「俺たちも行く?」 「僕たちが行ったら、変だろう?見てごらんよ、カップルばっかじゃないか」 「ふーん」 シチューを頬張りながら、忠はテレビを見やった。確かに、カップルが仲睦まじくベッタリとくっつきながらイルミネーションを見ていた。 「…誰も気にしないと思うけどな」 ポツリと忠は呟いた。 「ん?」 不思議そうに首を傾げ、祐輔が目線で訴えるものの「何でもない」と言って、今度はチキンを頬張る。 「…そういえば、今年はなんて書いたの?」 マッハの速さで夕食を食べていく忠のために、デザートのケーキを切り分けながらテーブルの端に置いてある封をされたカードを見やり、問いかけた。少し声に緊張が混じっている。 「秘密」 ニヤリと忠は笑う。
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