香島譲

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香島譲

 画家・香島譲の広いアトリエで主催される油彩教室には、沢山の生徒が集まる。小学生から80代の老人まで、生徒数は100名を超していた。  香島は35才の独身。彼はカトリック神父でもあり、恋愛や結婚は禁じられている。  画家としてはかなりの腕を持つ。毎年、ニュ―ヨ―クのグリニッジビレッジやパリで個展を開いている。 「香島センセ、今夜、ワタシ、オ―ケ―です」  油彩教室の生徒で、企業OLの桜子が香島の耳元で囁いた。  香島は嬉しく無さそうにして、首を横に振った。  先月、酔った勢いで桜子と関係を持ってしまった香島。もちろんカトリック的にもダブ―である。  確かに桜子の21才のはちきれんばかりのボディは、香島には眩しかったのだけれど。  すると桜子は 「ワタシから逃げられませんよ。逃げたら教会に言いつけちゃいますよ」  生徒達が居なくなり、桜子はアトリエから繋がる廊下から香島のリビングへ入った。  香島はウイスキ―をロックで飲んでいた。煙草を深く吸い込み、描きかけの油彩画に筆を入れている。  桜子が、『抱いてくれ』と抱きついてくるだろう  平気でダブ―を犯せるほど、オレは図太い男じゃない  飲まなきゃ、出来ない     
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