あたしが生まれた七年後に

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「ええっと、うん、その、迷惑じゃなかったら、それ、もらってくれない、かな?」  龍一はそっと指輪を外し、あたしの左手をとる。どうしよう、手が震える。  薬指に指輪が通される。  左手をそっと目の高さまで持ち上げて、眺める。  どうしよう。もうどうしたらいいかわからない。  少しカーブしたデザインのピンクゴールド。中央に控え目に小さな石が三つ程光っている。真ん中の一つはアクアマリン。あたしの、誕生石。 「ごめん、安物なんだけど」  龍一が言う。そんなこと、どうでもいいのに。だって、 「ううん、どうしよう、嬉しい、ありがとう」  まさか指輪、もらえるなんて思っていなかった。結局、欲しいなんて言えなかったし。期待してなかった。  だからこそ、すごく嬉しいどうしよう。 「あと、その……」  龍一の言葉に、顔をそちらに向ける。  彼はポケットからもう一つ指輪をだし、それを自分の手にはめた。  あたしにそれが見えるようにしながら、 「ごめん、これペアリングで、その……、嫌だったり、する?」  伺うようにして、あたしを見る。  あたしのと同じようなカーブを描く指輪。彼のは色がシルバーで、真ん中の石はついていなかった。  自分のと彼のを見比べる。お揃い。ペア。  嫌なわけが、ないじゃない。 「ぜんぜんっ」  もう、どうしようもなく泣きそうで、そう言うと、そのまま彼の首筋に抱きついた。  彼は少しよろけたけれども、そのまま背中を支えてくれる。 「沙耶……?」 「ありがとう、嬉しい、どうしよう」  涙が止まらない。  どうしよう。嬉し過ぎて困っている。 「嬉しい。指輪、欲しいなって思ったけど。あたしが言うと重いかなって。年上だし、妙な現実感があって。だけど、やっぱり嬉しい。ありがとう」  どうして、あたしが欲しいものがわかるのだろうか。嬉し過ぎて、好き過ぎて、幸せ過ぎて、愛し過ぎて、もうどうしたらいいのかわからない。  正直、困惑している。
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