あたしが生まれた七年後に

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 正直、付き合いだしてからずっと困惑している。 「そういえばさー、沙耶、なんか欲しいものとか、ある?」  夕飯を作っていると、背中にそう声をかけられた。  突然のことでどきっとする。  そっか、もうすぐあたし誕生日だから。 「ん? 龍一が選んでくれたものならなんでもいいよ、ありがとう」  振り返らずに答える。  振り返ることは、できない。多分、あたし今、間抜けな顔をしている。不意を、つかれて。  彼がくれるという、初めてのプレゼント。そう思うと、今度は口元が緩んでしまう。  しっかりしないと。 「龍一」  ごまかすためにも振り返って名前を呼ぶと、彼はソファーから立ち上がりやってきた。 「どう?」  ミートソースの味見をお願いする。 「ん、おいしい」 「そう? よかった」  一人でご飯を食べることが多かったから、一緒に食べてくれる人がいるのは嬉しい。おいしいと言われるとさらに嬉しい。  お皿を出すように頼むと、迷わずパスタ皿を取り出された。すっかり彼はあたしの家の中を把握している。  榊原龍一。もうすぐ付き合って1年になるあたしのカレシ。先月19歳になったばかりの、大学1年生。  そして、あたし、大道寺沙耶はもうすぐ26歳になる。  年齢差とか、付き合うまではそんなに気にしていなかった。でも、考えてみたら、7歳の年の差は、大きい。  そしてなによりも、彼が妙に気にしている。あたしよりも。それに少し、困っている。  おいしい、と笑う彼を見て、嬉しくなってあたしも微笑む。  ご飯を食べているときの彼は、本当においしそうな顔をして、嬉しそうに笑って。ちょっぴりどこか幼い感じ。  でも、ふとした瞬間に見せる顔とか、手とか、体つきとか、出会った二年前よりは少し大人っぽくなっている。  今も、フォークを握るその指先。あたしのとは違う、骨っぽい、男の人の手。  そういう部分に気づくと、どきっとする。  7歳の年の差は大きい。  でも、年の差が気にならないぐらい、日に日に彼は大人の男の人になっていくから、正直それにも困惑している。
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