あたしが生まれた七年後に

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「なるほど、つまり、ノロケ?」  頬杖をついて、つまらなさそうに円姉が言った。 「ノロケじゃないってば」  困っているという話が、どうしてそうなるの。 「あのね、沙耶」  円姉はわざとらしくため息をついてみせると、 「ノロケかどうかを決めるのは言った人ではないの、言われた方なの」 「……じゃあ、もうノロケでいいけれども」  言うと、円姉は開き直ったと楽しそうに笑った。  一海円。あたしの仕事上の上司。そして、小さいころからずっと一緒だった姉のような存在。というか、姉。たまに、母親。  今は、外での仕事を終え、円姉お気に入りのお店で少し遅いランチタイム。 「まあでも、龍一君と上手くいっているようで安心した」  柔らかく微笑む。 「おかげさまで」  龍一と無事付き合うことができたのは、半分ぐらいは円姉のおかげだ。彼女のおせっかいさと優しさがなければ、付き合うことはなかった。  そして、ここまで無事付き合いが続いていることも。 「誕生日プレゼントねー。一カ月前、龍一君の誕生日の時には、沙耶が悩んでたわよね」 「だって、大学生の男の子が欲しいものなんて、わからないもの」  龍一がしてくれる大学の話はとても楽しい。けれども、たまにわからない部分がある。基本的な大学のシステムについて、あたしは知らない。行かなかったから。  だから、龍一ぐらいの年齢のときに、男の子がカノジョから何をもらうのかという情報が、なんにもなかった。 「結局財布にしたんだっけ?」 「そう。あの時はありがとう」  財布選びも円姉に付き合ってもらった。本当、助かっている。 「それで? あんたは何が欲しいって言ったの、誕生日」 「え、……なんでもいいって」  円姉はわざとらしくため息をついて、 「一番困る回答ね」 「だって。どこまでねだっていいものか、わからないし」  物としても、価格帯としても。
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